ナドール

ナドール

Ennaḍor / ⴻⵏⵏⴰⴹⵓⵔ
الناظور / الناضور
ナドールの位置(モロッコ内)
ナドール
ナドール
モロッコ国内の位置
座標:北緯35度10分 西経2度56分 / 北緯35.167度 西経2.933度 / 35.167; -2.933
モロッコの旗 モロッコ
地方 オリアンタル地方
ナドール州(英語版)
政府
標高
42 m
人口
(2014)[1]
 • 合計 159,590人
 • 順位 19位
等時帯 UTC+1 (CET)
民族 ベルベル人: 98%; スペイン人: 1%; その他外国人: 1%
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ナドール (フランス語: Nador; ベルベル語: Ennaḍor, ⴻⵏⵏⴰⴹⵓⵔ; アラビア語: الناظور‎ または الناضور) は、モロッコリーフ地方北東部に位置する都市。人口161,726人(2014年国勢調査)[1]地中海とつながるサブハブーアレグ(Sebkha Bou Areq) と呼ばれるラグーンに面しており、スペイン領メリリャの南10キロメートル (6.2 mi)に位置する。19世紀に建設され、1956年にモロッコが独立するまでスペインの統治下にあった[2]。ナドール州は600,000人以上の人口を抱え、リーフ人とベルベル人が多い。

名称

ナドールという名称の由来については諸説ある。ラグーンの畔にある小さな村 "Has Nador" (アラビア語で「見張る」を意味する「نطر」あるいは「眺める」を意味する「نظر」に由来する)からとられたとする説が有力である[3][2]。なお、الناظور‎(an-nāḍūr, アン=ナーズール)は、アラビア語で「双眼鏡」を意味する(al- は定冠詞[4]

概要

ナドールでは、漁業や農業、軽重工業が行われている。近年は劇的な経済成長を遂げており、特に、リーフ山脈のウィクサン山から採れる鉄鉱石やジェラダ無煙炭を原料とする鉄加工業、繊維業、化学産業、電気製品製造業などの工業においては著しい[5]

6月から8月にかけての夏期には、ナドール地域出身でヨーロッパに住む人たちが多く町に戻ってくる。これらの訪問者は年間で25万人を超える。多くはナダール市内のホテルではなく、親戚の家や借りアパートに滞在する。

地中海の沿岸で、スペインの町・メリリャに近接するという地理的条件のために、国際貿易が盛んであり、町ではスペインの食料品や日用品の販売が盛んに行われている。また、安いスペインや中国製の商品を、関税を避けるための密輸が多いことで、悪名高い。最近密輸は減少しているが、いまだにアルジェリアからの密輸ルートと競合している。ヨーロッパや中国からの製品の多くはメリリャやナドールを経由して、合法・非合法問わずモロッコやアフリカ各国に運ばれる。製品は食料品、衣類、靴、家電製品、ハードウェアなど多岐に及ぶ[6][7]

人口動態

1950年代初頭には2万3千人いた人口が、スペイン人の流出に伴い1960年には5千人と激減したにもかかわらず[8]、ナドールは国内で最速の成長をしている都市である[9]。1960年には4,806人だった人口は1971年には32,000人と566%にもなった[10]。この500%を超える成長はもう1度繰り返され、2015年には推計で200,000人の人口があった[11]。わずか8年前の2007年には、人口は120,000人であった[12]。住民の98%はリーフ人とベルベル人によって占められている。そのため、ベルベル人の文化が色濃く残り、世界最大のリーフ語ベルベル語の一派)が話される町である[13]。市内の人口密度はナドール州全体の数倍にも及ぶ[14]

地理

ナドールはモロッコ国内で17番目に大きな町であり、オリアンタル地方ナドール州の州都である。地中海につながるサブハ・ブーアレグというラグーンに面しており、市街地は海岸に沿って広がっている。アルジェリア国境は町のおよそ75キロメートル (47 mi)西にあり、スペインの飛地であるメリリャは10キロメートル (6.2 mi)北、モロッコの首都・ラバトは380キロメートル (240 mi)西に位置する。ナドールの中心は、南端のバス/タクシーターミナルへと南北方向に通るハッサン2世通り沿いにある。ムハンマド5世通りは港と政府施設、役場を東西に結ぶ[15][16]。ムハンマド5世通りには、広場やスペイン風の建築、ローマカトリックの教会が並ぶ[17]。役所や郵便局、モスクはすべてユーセフ・ベン・タシェフィヌ通りにある[18]

ナドールの夜景

環境

ナドールのラグーン

ラグーンや市の東側には、渡り鳥など、多くの野生動物が集まる[19][20]ムールーヤ川(英語版)や川の河口付近にあるカリエ・アルクメーヌにある湿地保護区では、オオフラミンゴカンムリカイツブリソリハシセイタカシギ[21]セイタカシギオオバンハマシギミヤコドリアカハシカモメ(英語版)アオサギコサギツルシギオグロシギアカアシシギカワセミハシグロクロハラアジサシなど、数多くの鳥類が生息する[2][22]。鳥にとって安全な避難場所であるのと同時に、この地域はその美しい景色のために地元の人が頻繁に訪れる。広大な地域を真水や海水が覆っており、砂丘、沼地が存在する。イトトンボバッタイトグモといった昆虫も棲む。さらに、オオハマガヤ、ビャクシン、ゴジアオイなどの植物もみられる[2]

気候

ナドールはステップ気候である。夏よりも冬の方が雨が多い。ケッペンの気候区分ではBShとなる。年間平均気温は18.7 °C (65.7 °F)、年間降水量は313 mm (12.32 in)である。

ナドールの気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C°F 16.6
(61.9)
17.2
(63)
18.9
(66)
20.8
(69.4)
23.5
(74.3)
26.7
(80.1)
29.6
(85.3)
30.1
(86.2)
27.8
(82)
24.6
(76.3)
20.7
(69.3)
18.1
(64.6)
22.88
(73.2)
平均最低気温 °C°F 8.4
(47.1)
8.9
(48)
10.7
(51.3)
12.4
(54.3)
15.0
(59)
18.0
(64.4)
20.7
(69.3)
21.8
(71.2)
19.5
(67.1)
16.2
(61.2)
12.4
(54.3)
10.0
(50)
14.5
(58.1)
降水量 mm (inch) 52
(2.05)
37
(1.46)
33
(1.3)
38
(1.5)
21
(0.83)
7
(0.28)
1
(0.04)
3
(0.12)
16
(0.63)
24
(0.94)
33
(1.3)
48
(1.89)
313
(12.32)
出典:Climate-Data.org,Climate data

通信

詳細は「ナドール通信塔(英語版)」を参照

ナドール付近にある通信基地では、長波、短波によるMEDI1ラジオ(英語版)の放送が、マグリブ各国に向けて行われている。この電波塔は高さ約380メートルであり、アフリカの人工建築物としては最も高い。

交通

ナドール駅
ナドール駅(英語版)」、「ナドール国際空港(英語版)」、および「ナドール港(英語版)」も参照

ナドールからタウリルト(英語版)へ向かう鉄道は、2009年7月2日にムハンマド6世によって開通が宣言された[23][24]。これはONCFのプロジェクトの一環である。タウリルトは以前まで、ONCFが運行するバスで結ばれていた[25]

このほかにも、ナドールとモロッコの主要都市へはバスの直行便が運行されている。また、ナドール港は、スペインアルメリアとは毎日、フランスのセットとは週1便のフェリーで結ばれている。

ナドール国際空港は、モロッコ国内や、フランス、ドイツなどヨーロッパへの直行便が就航している。また、近くのメリリャもナドールの第2空港として機能している。

フェズ=ウジダ高速道路(英語版)は、メリリャ付近まで続いている。

経済

ナドールの町並み
旧リーフ・ホテル

ナドールの主産業であった漁業と農業に加え、繊維業、化学工業、鉄加工産業が町の主な収入源である。最近では、観光も重要な産業となっている[26]。多くの観光客はモロッコの他の都市からやってくるが[27]、国際フェリーが就航しているスペインやフランスなど、ヨーロッパからの観光客も増えてきている[28]。ナドール国際空港は1999年に開業し[28]アムステルダムブリュッセルフランクフルトマルセイユバルセロナなどヨーロッパ各都市への便がある。また、ナドール駅からはモロッコ国内の都市へと鉄道が発着する。近年はこの地域で観光業に力が入れられており、ムハンマド6世の支持も得ている[29]。小道や椰子の木の並ぶ大通り、目新しいマリーナ、ホテル、カフェ、銀行、飲食店が観光産業の発展を後押ししている[11][16]。ナドールは近年劇的な経済成長を遂げており、伝統的な産業のほかに、鉄加工業や、電気製品、化学、繊維の分野における近代産業も発達している。漁業や農業も依然として主要産業の1つである。メリリャとの国境付近にあるベニ・エンサール(英語版)にはナドール港があり、地中海沿岸有数の漁港となっている。また、海軍(英語版)のドックヤードもおかれている[11]。ナドールの農地は肥沃であり[30]、フルーツ、柑橘類、ワイン用のブドウが主な産物である[28]

観光

夏の間、ナドール近郊で育ち、ヨーロッパに住む数多くのモロッコ人移民が戻ってくる。この里帰りは、買い物、家族の手伝い、地元の貿易や観光業に対する刺激などの面で、町の経済に大いに寄与している。ほかの都市と同様、ムハンマド6世は外国人観光客の誘致に力を入れており、彼が選出した市長が町を見た目をよくするための試みを行っている。カフェではプラスチック製ではなく鉄や木製の椅子を外に置き、家は適切な色でペイントされているほか、海沿いの大通りは再開発され、拡張工事が行われた。この大通りには、2008年上旬までリーフ・ホテルが存在したが、2008年春には既存のホテルが取り壊され、道路の拡張が施された。新しい通りは町の中心まで通っており、ナドールの玄関口であるラウンドアバウトまで通じている。ホテルの残りの敷地は再開発され、新しいホテルコンプレックスとなっている。何度かの遅れが生じたが、Khalid El Adouliの監督のもと工事が進められた[31]。以前はホテルから直接海岸に出られたが、公共の通りとなってしまったことで、ホテルとは係争状態にある[要出典]。新しいホテルは裕福な観光客や、会議を開催するビジネスマンを主なターゲットとしている。飲酒のほか、会議室、パーティールームも完備されている。客室には10のスイートや76のアパートメントルームも含まれ、総床面積は30.000 m²である。再開発に伴う負債は3億5600万ディルハムにのぼる[32]

ナドールの市街地のすぐ外のところでは、別荘、ゴルフコース、マリーナなどのある環境リゾートも開発されている。480ヘクタールの敷地に720.000 m2の広さのリゾートが建設される。10年に及ぶ開発は2008年にムハンマド6世のもとスタートされ[33]、リーフ・ホテルとこのプロジェクトはともにCGIが担当している[34]。リゾートが完成すれば、およそ1,700のヴィラ、1,300の邸宅、ホテル、27ホールのゴルフコース、観光施設ができる予定である[要出典]

教育

  • Instituto Español Lope de Vega

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b “POPULATION LÉGALE DES RÉGIONS, PROVINCES, PRÉFECTURES, MUNICIPALITÉS, ARRONDISSEMENTS ET COMMUNES DU ROYAUME D’APRÈS LES RÉSULTATS DU RGPH 2014” (ar, fr). High Commission for Planning, Morocco (8 April 2015). 29 September 2017閲覧。
  2. ^ a b c d http://www.marokko-info.nl/english/nador/
  3. ^ Honnor, Julius (2012). Morocco Footprint Handbook. Footprint Travel Guides. Page 397. ISBN 9781907263316.
  4. ^ “Translation and Meaning of ناظور in Almaany English Arabic Dictionary”. 2018年3月10日閲覧。
  5. ^ Morocco. Dorling Kindersley Eyewitness Travel Guides. (2006) 
  6. ^ Info about Nador and Smuggling visited on 6 May 2008
  7. ^ LookLex page on Nador visited on 6 May 2008
  8. ^ Seddon, David (1981). Moroccan Peasants: A Century of Change in the Eastern Rif, 1870-1970. Dawson. Page 242. ISBN 9780712909303.
  9. ^ Hardy, Paula and Athony Ham (2007). Morocco. Lonely Planet. Page 208. ISBN 9781740599740.
  10. ^ Pennell, C.R. (2000). Morocco Since 1830: A History. NYU Press. Page 329. ISBN 9780814766774.
  11. ^ a b c Warson, Lucilla (2015). DK Eyewitness Travel Guide: Morocco. Penguin. Page 162. ISBN 9781465438324.
  12. ^ Hardy, Paula and Athony Ham (2007). Morocco. Lonely Planet. Page 208. ISBN 9781740599740.
  13. ^ Honnor, Julius (2012). Morocco Footprint Handbook. Footprint Travel Guides. Page 397. ISBN 9781907263316.
  14. ^ Seddon, David (1981). Moroccan Peasants: A Century of Change in the Eastern Rif, 1870-1970. Dawson. Page 199. ISBN 9780712909303.
  15. ^ Honnor, Julius (2012). Morocco Footprint Handbook. Footprint Travel Guides. Page 398. ISBN 9781907263316.
  16. ^ a b Clammer, Paul (2014). Lonely Planet Morocco. Lonely Planet. Page 221. ISBN 9781743600252.
  17. ^ Laura M. Kidder and Sullivan, Mark (2009). Morocco. Fodors Travel Publications. Page 53. ISBN 9781400008049.
  18. ^ Honnor, Julius (2012). Morocco Footprint Handbook. Footprint Travel Guides. Pages 397-398. ISBN 9781907263316.
  19. ^ Clammer, Paul (2014). Lonely Planet Morocco. Lonely Planet. Page 397. ISBN 9781743600252.
  20. ^ (in German) Kohlbach, Edith (2006). Reisehandbuch Marokko. Edith-Kohlbach-Reisebücher. Page 51. ISBN 9783981086829.
  21. ^ Searight, Susan (1999). Maverick Guide to Morocco. Pelican Publishing. Page 272. ISBN 9781455608645.
  22. ^ French, Carole (2010). National Geographic Traveler Morocco. National Geographic Books. Pages 133-134. ISBN 9781426207068.
  23. ^ Le train Nador-Taourirt, enfin sur les rails, FesPub.net.
  24. ^ King inaugurates Nador stations Archived 2009-08-28 at the Wayback Machine.
  25. ^ Timetables for the bus link can be found on the ONCF website Archived 2008-06-14 at the Wayback Machine..
  26. ^ Oxford Business Group (2007). Oxford Business Group. Page 202. ISBN 9781902339764.
  27. ^ Oxford Business Group (2011). Oxford Business Group. Page 123. ISBN 9781907065309.
  28. ^ a b c Searight, Susan (1999). Maverick Guide to Morocco. Pelican Publishing. Page 271. ISBN 9781455608645.
  29. ^ Jacobs, Daniel and Keith Drew (2013). The Rough Guide to Morocco. Penguin. Section: Nador. ISBN 9781409332671.
  30. ^ (in German) Kohlbach, Edith (2008). Ostmarokko. Edith-Kohlbach-Reisebücher. Page 36. ISBN 9783941015005.
  31. ^ Profile of Khalid El-Adouli, managing architect of the new Rif hotel development. Visited: 7 September 2012
  32. ^ Information on hotel redevelopment from RKempo Community site, visited 7 September 2012
  33. ^ Press-release of CGI about Start of development Abdouna Trifa (French), 15 July 2008. Downloaded: 7 September 2012
  34. ^ Website CGI: Our organisation (French), visited 7 September 2012

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、ナドールに関するカテゴリがあります。 ウィキボヤージュには、ナドールに関する旅行情報があります。



座標: 北緯35度10分0秒 西経02度56分0秒 / 北緯35.16667度 西経2.93333度 / 35.16667; -2.93333

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