ナノトランスファープリンティング

ナノトランスファープリンティング(: nanotransfer printing: nTP) またはメタルトランスファープリンティングナノメートルオーダーの微細配線作成技術として期待されるナノ構造構築法の一手法[1]

概要

マイクロコンタクトプリンティングナノインプリントディップペン・ナノリソグラフィ等と並ぶソフトリソグラフィの一種で金属を含有するインクの転写によって微細構造を形成する。

従来の高額な露光装置を使用せずに微細構造をシリコンウエハー上に作成できるとされる。

2002年にルーセント・テクノロジーズベル研究所のYueh-Lin Looのグループによって開発された[2]。転写型の材料は弾性的な高分子素材からヒ化ガリウム(GaAs)のような硬質の素材まで使える[3]。実験では線幅500nmのラインパターンや、直径130nmのドットパターンなどが試作され、有機トランジスタや相補性インバーター回路の配線などに成功した[3]

用途

長所

  • 従来のフォトリソグラフィで作成していた同規模の微細なパターンを比較的簡便な装置で作成可能。
  • 配線に不可欠な電極、金属配線のパターンを化学修飾や加熱を使用せずに比較的低い温度条件下で作成可能なので有機半導体材料の微細加工に適する[6]
  • 広い面積を一度に転写できるので生産性が高い[4]

短所

  • 転写時の位置合わせ(アライメント)の精度が重要だが、柔軟性のある樹脂の転写型の変形等も考慮しなければならず、難易度が高い。
  • 転写時に転写対象に接触するので転写型のコンタミネーションによる汚染の可能性がある。

関連項目

脚注

  1. ^ “ナノトランスファープリントの詳細情報”. 2016年10月7日閲覧。
  2. ^ Loo, Yueh-Lin; Willett, Robert L.; Baldwin, Kirk W.; Rogers, John A. "Additive, nanoscale patterning of metal films with a stamp and a surface chemistry mediated transfer process: Applications in plastic electronics." Applied Physics Letters 81.3 (2002): 562-564, doi:10.1063/1.1493226
  3. ^ a b “ナノスケールの“刻印”や“印刷”でナノデバイスの量産性を競う ─ 2002年8月の注目論文”. 2016年10月7日閲覧。
  4. ^ a b “透明マントの開発、格段に進化:戦闘機も隠せる可能性も”. 2016年10月7日閲覧。
  5. ^ “Invisibility cloak could mask fighter jets”. 2016年10月7日閲覧。
  6. ^ “分子エレクトロニクス” (PDF). 2016年10月7日閲覧。[リンク切れ]

参考文献

  • 自己組織化ナノマテリアル: フロントランナー85人が語るナノテクノロジーの新潮流 ISBN 9784902410112
  • バイオナノプロセス: 溶液中でナノ構造を作るウェット・ナノテクノロジーの薦め ISBN 9784882319955

外部リンク

  • 飯村慶太, 細野智史, 一木正聡, 伊藤寿浩, 須賀唯知、「ナノトランスファー法を用いた強誘電体膜の剥離特性」 『エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集』 第24回エレクトロニクス実装学術講演大会 セッションID:12B-07, doi:10.11486/ejisso.24.0_228