マリーケ・フェルフールト

マリーケ・フェルフールト
2012年9月、イベント中のマリーケ・フェルフールト
個人情報
愛称Wielemie
生誕 (1979-05-10) 1979年5月10日
ベルギーの旗 ベルギーフラームス=ブラバント州ディースト
死去 (2019-10-22) 2019年10月22日(40歳没)
ベルギーの旗 ベルギー、フラームス=ブラバント州ディースト[1]
スポーツ
ベルギーの旗 ベルギー
競技車いす陸上競技
種目T52クラス(100m、200m、400m、1500m、5000m)
獲得メダル
車いす陸上競技
ベルギーの旗 ベルギー
パラリンピック
2012 ロンドン 100m T52
2012 ロンドン 200m T52
2016 リオデジャネイロ 400m T52
2016 リオデジャネイロ 100m T52

マリーケ・フェルフールトMarieke Vervoort1979年5月10日 - 2019年10月22日)は、ベルギーの女性車いすアスリート(車いす陸上競技 T52クラス)。パラリンピック金メダリスト。

概要

14歳の時に反射性交感神経性ジストロフィー、進行性四肢麻痺の診断を受けた[2]

車いすバスケットボール、水泳、パラトライアスロンなどに挑戦し、2006年と2007のパラトライアスロン世界選手権の女子ハンドサイクル部門(PC1クラス)において、優勝した[3]。2007年にはハワイで行われたアイアンマンレース(女子ハンドサイクル)に出場した[4]。その後、パラトライアスロンから転向し、ブローカート(英語版)車いす陸上競技を行うようになった[5]

主な競技成績

2012年ロンドンパラリンピックにおいて、T52クラスの100mで金メダルを、同200mで銀メダルを獲得した[6]

2016年リオデジャネイロパラリンピックでは、T51/52クラスの400mで銀メダルを、同100mで銅メダルを獲得した[6]

2019年時点では、400m、800m、1,500m、5,000mにおいて、世界記録(女子T52クラス)を保持していた[7]

安楽死

筋力が徐々に衰える進行性の脊髄疾患に苦しんでおり、治療は不可能とされており、痛みや発作で眠れないことがある状態だった[8]。自身の障害による苦痛などから、緩和ケア安楽死[9]問題に携わるウィム・ディステルマンズ(オランダ語版)医師と出会い[2]、安楽死を選択するための承認を求め、2008年に書類にサインした[1]

リオパラリンピックの大会中には、大会後に競技から引退し、安楽死を実行するとの報道で注目された[10]。記者会見では、「その時はまだ来ていない」と述べ、競技引退後すぐの安楽死を否定していた[11]

2017年には日本に旅行で訪れ、交流会等にも参加している[2][12]。2018年には、競技用具等をベルギーのスポーツ博物館(: Sportimonium)に寄贈し、特別展示会が開催された[13]

鎮痛剤への依存や、入退院を繰り返す中、安楽死の実施が選択され、2019年10月22日に死去した[2][8]。死後、遺骨は彼女の希望でスペインカナリア諸島の海に散骨されたという[14]

友人で写真家のリンジー・アダリオ(英語版)と、ニューヨークタイムズの記者アンドリュー・ケーは、最後の日々に密着取材した記事を公表した[2]。取材は本人の許可を得たものであったが、家族からは故人のプライバシーの問題についての懸念も示された[15]

また、ポーラ・ラパポート(ドイツ語版)により、安楽死までの最後の3年間を追ったドキュメンタリー「Addicted to Life」(アメリカ・ベルギー 2022年)[16]が製作された[17]。日本でも「生きるこだわり 安楽死を選んだパラ金メダリスト」として、NHKNHKBSで放映された(50分の再編集版)[14]

受賞歴

  • 2012年、フランドルスポーツ賞(フランドル・スポーツ・ジュエル)を授与された[18]
  • 2013年11月、フィリップ国王とマティルド王妃から王冠勲章(英語版)グランドオフィサー章を授与された[19]
  • 2012年と2015年には、ベルギーのパラリンピアン・オブ・ザ・イヤーを受賞した[20]
  • 2014年、ビクトル・ボワン賞(英語版)を受賞した[21][22]
  • 2015年、フランドルスポーツジャーナリスト協会(VBS)が選定する「フレミッシュジャイアント」賞(: Vlaamse Reus)に選定された[23]
  • 2016年、フランドル共同体名誉勲章(オランダ語版)を受賞した。

外部リンク

  • WIELEMIE... Sporten voor het leven Marieke Vervoort(公式サイト)
  • Marieke Vervoort | International Paralympic Committee(国際パラリンピック委員会(IPC)による紹介)
  • マリーケ・フェルフールト (@wielemie.marieke.vervoort) - Instagram

脚注

  1. ^ a b “Paralympian Marieke Vervoort dies by voluntary euthanasia, aged 40”. オーストラリア放送協会(ABC). (2019年10月24日). https://www.abc.net.au/news/2019-10-23/marieke-vervoort-dies-by-euthanasia-paralympian/11633210 2024年8月12日閲覧。 
  2. ^ a b c d e Andrew Keh (2019年12月5日). “The Champion Who Picked a Date to Die”. The New York Times. https://www.nytimes.com/interactive/2019/12/05/sports/euthanasia-athlete.html 2024年8月12日閲覧。 
  3. ^ “Results: Marieke Vervoort (BEL)”. World Triathlon. 2024年8月12日閲覧。
  4. ^ “PC PARATRIATHLON - Physically Challenged”. Mondo Triathlon Daddo FCZ #ioTRIamo. 2024年8月12日閲覧。
  5. ^ “Marieke Vervoort, athlète paralympique souffrant d’une maladie incurable, est morte par euthanasie”. Le Monde. (2019年10月23日). https://www.lemonde.fr/disparitions/article/2019/10/23/l-athlete-paralympique-belge-marieke-vervoort-est-morte_6016514_3382.html "2024-08-12閲覧。 
  6. ^ a b “Marieke Vervoort”. International Paralympic Committee. 2024年8月12日閲覧。
  7. ^ “Champion wheelchair athlete Marieke Vervoort dies at 40”. The Bulletin. (2019年10月23日). https://www.thebulletin.be/champion-wheelchair-athlete-marieke-vervoort-dies-40 2024年8月12日閲覧。 
  8. ^ a b “ベルギーの車いすパラリンピック選手、40歳で安楽死”. BBC. (2019年10月23日). https://www.bbc.com/japanese/50150446 2024年8月12日閲覧。 
  9. ^ ベルギーでは、2002年に、一定の要件を満たす場合の医師による安楽死が合法化されている。
  10. ^ “Rio Paralympics: Marieke Vervoort plans suicide after competing at Rio 2016”. The Sun. (2016年9月6日). https://www.thesun.co.uk/sport/olympics/1733740/sprinter-marieke-vervoot-admits-she-may-kill-herself-after-going-for-gold-in-brazil/ 2024年8月12日閲覧。 
  11. ^ “安楽死まだ選択しない パラリンピック陸上のベルギー選手”. BBCニュース. (2016年9月12日). https://www.bbc.com/japanese/37336534 2024年8月12日閲覧。 
  12. ^ “安楽死希望、ベルギーの元パラリンピック選手が来日 - パラリンピック”. 日刊スポーツ. (2017年4月23日). https://www.nikkansports.com/olympic/paralympic/news/1812438.html 2024年8月12日閲覧。 
  13. ^ “Expo over Marieke Vervoort: “Heel wat momenten uit mijn carrière flitsen door mijn hoofd: kippenvel””. De Standaard. (2018年5月4日). https://www.standaard.be/cnt/dmf20180503_03495316 2024年8月12日閲覧。 
  14. ^ a b 「生きるこだわり 安楽死を選んだパラ金メダリスト」 - ドキュランドへようこそ NHK(初回放送日:2024年7月5日)、2024年7月30日閲覧
  15. ^ “New York Times publishes intimate report on last days of Marieke Vervoort”. The Brussels Times. (2019年12月8日). https://www.brusselstimes.com/82574/new-york-times-publishes-intimate-report-on-last-days-of-marieke-vervoort 2024年8月12日閲覧。 
  16. ^ Addicted to Life (2022) - IMDb(英語)
  17. ^ Amy Woodyatt (2023年5月22日). “‘I have my life in my own hands’: A filmmaker spent three years with Paralympian and triathlete Marieke Vervoort to explore her wish to die by euthanasia”. CNN. https://edition.cnn.com/2023/05/22/sport/marieke-vervoort-addicted-to-life-intl-spt/index.html 2024年8月12日閲覧。 
  18. ^ “Vlaamse Sportprijzen”. Strategische AdviesRaad voor Cultuur, Jeugd, Sport en Media. 2024年8月12日閲覧。
  19. ^ Hedwig Neesen (2013年11月20日). “Marieke Vervoort is Grootofficier in de kroonorde (Diest)”. Het Nieuwsblad. https://www.nieuwsblad.be/cnt/blhne_20131119_001 2024年8月12日閲覧。 
  20. ^ “Paralympiër van het jaar”. Sportgala. 2024年8月12日閲覧。
  21. ^ “Marieke Vervoort awarded the National Trophy Victor Boin 2014”. 国際パラリンピック委員会 (2015年1月22日). 2024年8月12日閲覧。
  22. ^ “Laureates of the National Trophy Victor Boin.pdf” (pdf). ベルギーパラリンピック委員会 (2024年1月15日). 2024年8月12日閲覧。
  23. ^ “Vlaamse Reus”. Vlaamse Bond van Sportjournalisten en -fotografen. 2024-08-!2閲覧。
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