閉鎖神経

神経: 閉鎖神経
閉鎖神経の周囲構造、右 股関節側より。閉鎖神経: Obturator nerveとして右上に示されている。
右下肢の神経。正面から見た図。この図においては閉鎖神経前枝(Aneterior division of obturator)が右上に示されている。
ラテン語 nervus obturatorius
支配 大腿の内側コンパートメント(英語版)
起始
分岐
閉鎖神経後枝(英語版)閉鎖神経前枝(英語版)
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ヒト閉鎖神経(へいさしんけい、: Obturator nerve)は、腰神経叢の第2、3、4腰神経の腹側分枝から発生する。この神経は運動神経として、大腿の内転筋群を支配し、大腿内側の感覚を支配する。

構造

閉鎖神経、L2(英語版)、L3、L4脊髄神経根(英語版)の腹側部分を起始とする[1]大腰筋の線維に沿って下降し、その内側縁、骨盤分界線(英語版)近傍で骨盤内に出る。その後、総腸骨動脈(英語版)の後方を下行して、内腸骨動脈(英語版)および静脈の外側を通り、小骨盤(英語版)の側壁に沿って、閉鎖動脈(英語版)・静脈の前上方を通り、閉鎖孔(英語版)の上部に至る。

ここで閉鎖神経は、閉鎖管(英語版)を通って骨盤外に出て前枝(英語版)後枝(英語版)に分かれるが、これらの枝は、最初は外閉鎖筋の線維の一部によって、下は短内転筋によって分離される[2]

副閉鎖神経は、一般人口の約8%~29%に存在する可能性がある[3]

分枝

  • 閉鎖神経前枝(英語版)
  • 閉鎖神経後枝(英語版)
  • 閉鎖神経皮枝(英語版)

機能

この神経は、大腿内側の皮膚の感覚神経支配を担っている。

この神経はまた、下肢(英語版)の内転筋(外閉鎖筋長内転筋短内転筋大内転筋薄筋)および恥骨筋の運動神経支配を担っている[4]。名称は類似しているが、内閉鎖筋の神経支配を担っていないことは注目に値する[5]

臨床的意義

膝の手術や尿路の手術の際に、他の麻酔法と併用して閉鎖神経ブロックが行われることがある[6]

詳細は「閉鎖神経ブロック」を参照

画像

  • 右側の仙骨神経叢。閉鎖神経(obturator) は画像中央を上から下に向かい、閉鎖管に入る。
    右側の仙骨神経叢。閉鎖神経(obturator) は画像中央を上から下に向かい、閉鎖管に入る。
  • 右側の寛骨を内側から。
    右側の寛骨を内側から。
  • 左側の肛門挙筋を内側から見た図。画像右側の閉鎖管を閉鎖神経と閉鎖動静脈が通る。
    左側の肛門挙筋を内側から見た図。画像右側の閉鎖管を閉鎖神経と閉鎖動静脈が通る。
  • 閉鎖神経(Obturator nerve)は外閉鎖筋を貫いて上から下に走行している。
    閉鎖神経(Obturator nerve)は外閉鎖筋を貫いて上から下に走行している。
  • 骨盤の動脈。閉鎖神経は黄色で示されている。閉鎖神経は骨盤内で外腸骨動脈、外腸骨静脈、閉鎖動脈の間を走行する。
    骨盤の動脈。閉鎖神経は黄色で示されている。閉鎖神経は骨盤内で外腸骨動脈、外腸骨静脈、閉鎖動脈の間を走行する。
  • 閉鎖動脈(英語版)の走行と変異。閉鎖神経と共に閉鎖管に入って骨盤外に出る[7]。
    閉鎖動脈(英語版)の走行と変異。閉鎖神経と共に閉鎖管に入って骨盤外に出る[7]
  • 腹腔内から見た右側の大腿輪と閉鎖管の位置関係。閉鎖神経と閉鎖動脈が通る閉鎖管は大腿輪の左下にある。
    腹腔内から見た右側の大腿輪と閉鎖管の位置関係。閉鎖神経と閉鎖動脈が通る閉鎖管は大腿輪の左下にある。
  • 腰神経叢。閉鎖神経(Obturator)は第2-4腰神経の分枝より成る。副閉鎖神経(Accessary obturator)は第3-4腰神経由来。
    腰神経叢。閉鎖神経(Obturator)は第2-4腰神経の分枝より成る。副閉鎖神経(Accessary obturator)は第3-4腰神経由来。
  • 腰神経叢とその分岐。閉鎖神経(Obturator)はL2レベルから分岐して椎体に沿って下向きに走行している。
    腰神経叢とその分岐。閉鎖神経(Obturator)はL2レベルから分岐して椎体に沿って下向きに走行している。
  • 腰神経叢の深部解剖と浅部解剖。左側に閉鎖神経(OBTURATOR NERVE)が見える。
    腰神経叢の深部解剖と浅部解剖。左側に閉鎖神経(OBTURATOR NERVE)が見える。
  • 骨盤内側壁の深部解剖。閉鎖神経(Obturator)は図の中央を右上から左下に向かっている。向かって右側に仙骨神経叢。
    骨盤内側壁の深部解剖。閉鎖神経(Obturator)は図の中央を右上から左下に向かっている。向かって右側に仙骨神経叢
  • 閉鎖神経。画像中央下、緑色で示されている。
    閉鎖神経。画像中央下、緑色で示されている。
  • 閉鎖神経(緑色)は、大腿神経(FEMORAL NERVE、左)や坐骨神経(SCIATIC NERVE、右)に比べて細い。
    閉鎖神経(緑色)は、大腿神経(FEMORAL NERVE、左)や坐骨神経(SCIATIC NERVE、右)に比べて細い。
  • 骨盤内の深部解剖。左側では閉鎖神経が大腿神経と坐骨神経の間を下行し、右側では外腸骨動脈の内側を下行することが示されている。
    骨盤内の深部解剖。左側では閉鎖神経が大腿神経と坐骨神経の間を下行し、右側では外腸骨動脈の内側を下行することが示されている。
  • 腰神経叢と仙骨神経叢の深部解剖、前方から
    腰神経叢仙骨神経叢の深部解剖、前方から

脚注

[脚注の使い方]

出典

  1. ^ Weiss, Lyn; Silver, Julie K.; Lennard, Ted A.; Weiss, Jay M. (2007-01-01), Weiss, Lyn; Silver, Julie K.; Lennard, Ted A. et al., eds., “Chapter 6 - Nerves” (英語), Easy Injections (Philadelphia: Butterworth-Heinemann): pp. 105–155, ISBN 978-0-7506-7527-7, http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9780750675277100065 2021年1月6日閲覧。 
  2. ^ “The Obturator Nerve - Course - Motor - Sensory - TeachMeAnatomy”. 2024年7月3日閲覧。
  3. ^ Turgut, Mehmet; Protas, Matthew; Gardner, Brady; Oskoui̇an, Rod J.; Loukas, Marios; Tubbs, R. Shane (2017-12-15). “The accessory obturator nerve: an anatomical study with literature analysis”. Anatomy 11 (3): 121–127. doi:10.2399/ana.17.043. https://dergipark.org.tr/en/pub/anatomy/issue/34659/385960. 
  4. ^ Moore, K.L., & Agur, A.M. (2007). Essential Clinical Anatomy: Third Edition. Baltimore: Lippincott Williams & Wilkins. 336. ISBN 978-0-7817-6274-8
  5. ^ Moore, K.L., & Agur, A.M. (2007). Essential Clinical Anatomy: Third Edition. Baltimore: Lippincott Williams & Wilkins. 345. ISBN 978-0-7817-6274-8
  6. ^ Rea, Paul (2015-01-01), Rea, Paul, ed., “Chapter 3 - Lower Limb Nerve Supply” (英語), Essential Clinically Applied Anatomy of the Peripheral Nervous System in the Limbs (Academic Press): pp. 101–177, doi:10.1016/b978-0-12-803062-2.00003-6, ISBN 978-0-12-803062-2, http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9780128030622000036 2021年1月6日閲覧。 
  7. ^ 伊藤隆 1994, p. 477.

参考文献

この記事にはパブリックドメインであるグレイ解剖学第20版(1918年)953ページ本文が含まれています。

  • 伊藤隆『解剖学講義』南山堂、1994年5月30日。ISBN 4-525-10051-6。 

関連項目

  • 死冠(英語版) - 閉鎖動脈(英語版)の破格。鼠径ヘルニア手術の大出血の元凶として恐れられた[1]

外部リンク

  • Obturator nerve - Duke University Health System's Orthopedics program
  • cutaneous field at neuroguide.com - デルマトームの神経支配(英語)
腰仙骨神経叢(英語版)神経
腰神経叢
腸骨下腹神経(英語版)
  • 外側皮枝(英語版)
  • 前皮枝(英語版)
腸骨鼠径神経(英語版)
  • 前陰嚢神経(英語版)/前陰唇神経(英語版)
陰部大腿神経(英語版)
  • 大腿枝(英語版)
  • 陰部枝(英語版)
外側大腿皮神経(英語版)
  • 膝蓋神経叢(英語版)
閉鎖神経
  • 前枝(英語版)
    • 皮枝(英語版)
  • 後枝(英語版)
  • 副閉鎖神経(英語版)
大腿神経
  • 前皮枝(英語版)
  • 伏在神経(英語版)
    • 膝蓋下枝(英語版)
    • 内側下腿皮枝(英語版)
仙骨神経叢
坐骨神経
総腓骨神経
  • 外側腓腹皮神経
    • 総腓骨神経腓腹交通枝(英語版)
  • 深腓骨神経
    • 外側終末枝
    • 内側終末枝
    • 足背指神経(英語版)
  • 浅腓骨神経
    • 内側足背皮神経(英語版)
    • 中間足背皮神経(英語版)
    • 足背指神経(英語版)
脛骨神経
  • 内側腓腹皮神経(英語版)
  • 内側踵骨枝(英語版)
  • 内側足底神経(英語版) (総底側指神経(英語版)
  • 固有底側指神経(英語版))
  • 外側足底神経(英語版) (深枝(英語版)
  • 浅枝(英語版)
  • 総底側指神経(英語版)
  • 固有底側指神経(英語版))
腓腹神経
  • 外側足背皮神経(英語版)
  • 外側踵骨枝
その他
  • 筋支配
  • 外旋筋群(英語版) (大腿四頭筋の支配神経(英語版)
  • 内閉鎖筋神経(英語版)
  • 梨状筋神経(英語版))
    皮神経(英語版): 後大腿皮神経 (下殿皮神経(英語版)
  • 後大腿皮神経会陰枝(英語版))
  • 貫通皮神経(英語版)
尾骨神経叢(英語版)
  • 陰部神経(英語版)
    • 下肛門神経(英語版)
  • 会陰神経(英語版)
    • 深枝(英語版)
    • 後陰嚢神経(英語版) / 後陰唇神経(英語版)
  • 陰茎背神経 (英語版) / 陰核背神経(英語版)
  • 肛門尾骨神経(英語版)
関連項目
  • ヒトの下肢の神経支配(英語版)
典拠管理データベース ウィキデータを編集
  • Terminologia Anatomica
  1. ^ 伊藤隆 1994, p. 477.